築58年の佇まいを継承する、エントランスリニューアル。八千代電ビル改修プロジェクト

大阪城公園を望む森ノ宮の一角に建つ八千代電ビルのエントランス改修を実施。既存ビルの歴史を継承しながら、新たに加える素材はできるだけ自然素材を採用。淺沼組リニューアル事業「ReQuality」の特徴の一つである「脱炭素・循環型リニューアル技術」を提供し、環境に配慮しながら建物の新たな価値を育むことを目指したプロジェクトです。
大通りである玉造筋に面し、森ノ宮駅からも至近という利便性の高い立地を活かし、通行人の視線を自然と引き込む開かれた空間を目指しました。

1階エントランス横にテナントとして営業していた花屋の退店を契機に、そのスペースをエントランスへと拡張する計画を進め、通りに対して開かれた大きな開口部を設け、視認性を高めることで、建物の印象を刷新しました。 昭和42年に建設された八千代電ビルはタイル張りの外壁が印象的で、時を経た今もなお、その魅力的なファサードを保ち続けています。今回の改修では、かつてテナント内部であった部分を外部空間として取り込み、ファサードを一直線に整える構成としました。内部に貼られていたタイルは丁寧に剥がして再利用し、さらに保管されていたタイルも活用することで、新旧の素材が自然につながる外壁を実現しました。

創業当時の様子。改修を何度か繰り返しながら、現在の姿に
改修後のエントランス

内部空間には左官仕上げの壁を施し、正面の腰壁には、淺沼組技術研究所が独自に開発した「立体木摺土壁」を設置。その上部には、改修工事で生じたタイルの端材を砕き、水性アクリル樹脂で固めた天板を配し、既存素材の記憶を空間に留めました。

淺沼組技術研究所開発による「立体木摺土壁」と既存タイルをアップサイクルした天板
自然音源スピーカーを設置し、奈良県・吉野の森の四季の音源を再生

また、クライアントの要望により、デジタルサイネージを設置し、企業の情報発信の場としています。自然素材に包まれた空間の中で、建物がもともと持つ趣と調和しながら、デジタル機器も周囲に馴染み、全体として柔らかく、温もりのある印象を生み出しています。

長年この建物を大切に使い続けてきたクライアントの想いに応え、空間を大きく改変せずに削ぎ落としたデザインで素材の質感を引き立て、空間の価値を高めることで、積み重ねてきた歴史とこれからの時間をつなぐリニューアルを実現しました。

施設概要
名称:八千代電ビル
所在地:大阪府大阪市中央区
竣工年:2025年6月
設計:淺沼組技術研究所 GOOD CYCLE DESIGN グループ
施工:淺沼組・淺沼組技術研究所
改修面積:約6㎡
協力会社:左官 施工協力 株式会社 KS AG / 天板研磨 関ヶ原石材
撮影:大竹央祐

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